17回生の平井法(ペンネーム:平井杏子)さんの新著をご紹介します。本著は、既刊「アガサ・クリスティを訪ねる旅」の姉妹編として上梓されました。ロンドンは世界一ゴースト人口の多い街。ロンドンの観光名所に出現するゴーストを紹介することで、歴史、文化、地理に言及する異色のロンドン観光の案内書です。
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◆著者 |
平井 杏子(ひらい きょうこ) |
◆出版社 |
大修館書店 |
◆版型 |
A5版 |
◆頁数 |
217頁 |
◆ISBN |
978-4-469-24590-5 |
◆発行日 |
2014年12月20日(第1版) |
◆定価 |
2,300円+税 |
◆購入 |
一般書店、インターネット書店 |
- ◆著者略歴
- 1965年 長崎県立長崎東高等学校卒業
- 昭和女子大学大学院、文学研究科特任教授
- ◆著書
- 『カズオ・イシグロ』(2011 水声社)
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『アガサ・クリスティを訪ねる旅』(2010 大修館書店)
- 『サミュエル・ベケットのヴィジョンと運動』(共著、2005年、未知谷)
- 『名作は隠れている』(共著、2009年ミネルヴァ書房)
- 翻訳 『ジャクソンのジレンマ』
(2002年 彩流社)
- 『アイリス・マードック』(1995 彩流社)
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- ◆目次
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第1章――ウエストミンスター、ホワイトホール
ロンドン中心地で観光客を出迎えるゴーストたち
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❋国会議事堂
❋ウェストミンスター寺院
❋首相官邸
❋ホース・ガーズ・パレード
- 第2章――セント・ジェイムズ宮殿、バッキンガム宮殿
華麗な宮殿と庭に暗い影を落とすゴーストたち
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❋セント・ジェイムズ宮殿
❋バッキンガム宮殿
❋グリーン・パーク
❋バーリントン・アーケード
- 第3章 ハイド・パーク、ケンジントン公園
富裕な人びとの暮らす街に住み着くゴーストたち
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❋メイフェア
❋バークリー・スクェア
❋マーブル・アーチ
❋ハイド・パーク
❋ケンジントン宮殿
❋ヴィクトリア&アルバート博物館
- 第4章 ソーホー、コヴェント・ガーデン
活気あふれる歓楽街に生きつづけるゴーストたち
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❋ロンドン交通博物館
❋コヴェント・ガーデン市場
❋ロイヤル・オペラ・ハウス
❋ネル・グウィン・タヴァーン
- 第5章 エンバンクメント、ストランド
歴史の刻まれた古い街路が大好きなゴーストたち
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❋ヴィクトリア・エンバンクメント
❋ザ・サヴォイ・ホテル
❋サマセット・ハウス
❋テンプル
❋リンカーンズ・イン・フィールズ
- 第6章 ホルボーン地区、大英博物館
芸術と文化の街に語り伝えられるゴーストたち
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❋大英博物館
❋レッドライオン・スクェア
❋ディケンズの家
- 第7章 シティ
つらく苦しい記憶の残る街をさ迷うゴーストたち
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❋スミスフィールド・マーケット
❋聖バーソロミュー協会
❋ロンドン・ウォール
❋セント・ポール大聖堂
❋アーメン・コート
❋ロンドン大火記念塔
❋ロンドン橋
- 第8章 ロンドン塔、ハンプトン・コート、ウィンザー
権力争いの場を離れようとしないゴーストたち
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❋ロンドン塔
❋タワー・ヒル
❋ハンプトン・コート
❋ウィンザー城
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- ◆内容紹介(あとがきから)
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ゴーストとはいったい何者でしょうか。時代によって国によって定義は様々でしょうが、英国のゴーストとは、肉体は滅び朽ち果てて塵に帰していようとも、時空を超えて人びとの記憶にとどまり、現存する歴史的遺物や自然や理解ある人の傍らに、気が付けばそっと佇んでいるもの。そう私は考えています。
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この本に収録されているゴースト伝説は、ロンドンに出没するゴーストのほんの一握りの紹介ということであるが、歴史や小説、戯曲に登場する著名人から名もない人々のゴーストまで、数多くのゴーストが登場する。
取り上げられているゴーストのいくつかを紹介する。
19世紀末、ロンドンを震撼させた切り裂きジャックのゴーストは、生前の非道を悔いて大晦日の夜にウェストミンスター橋からテムズ川にダイビングするのだという。
時代はさかのぼり、ローマ軍に抗して周辺部族をまとめ決起したケルト人イオニ族の女王、英雄ブーディカのゴーストは、リンカンシャー州でチャリオを駆って疾走したり、最後の地の説もあるエッピングの森を徘徊もする。
国会議事堂に現れるのは、プロテスタントを擁護するジェームズ1世の爆殺を図った火薬陰謀事件の首謀者、ガイ・フォークスのゴーストである。
清教徒革命で斬首されたチャールズ1世のゴーストはウインザー城を徘徊し、一方、清教徒革命の指導者、クロムウェルはマラリアで死亡し、ウェストミンスター寺院に埋葬されていたにもかかわらず、王政復古で裁判にかけられ、墓を暴いて絞首刑に処せられたのであるが、
ホルボーン駅からほど近いレッド・ライオンスクエアに現れるという。
貧困と失意のうちに亡くなったヘンリー8世の最初の妻、キャサリンはゴーストとなってキンボルトン城を徘徊し、姦淫のぬれぎぬを着せられて斬首された2番目の妻、アン・ブリンのゴーストは、斬首されたタワー・グリーンで首を抱えて歩くという。
葉巻の香りを漂わせるチャーチルのゴースト、ダウディ通りのディケンズ・ハウスやゆかりの場所いたるところに出現する、国民的人気作家のディケンズのゴーストなど、不遇な死とは縁のない有名人もゴーストとなって現れる。また、動物や乗り物のゴーストの話も紹介されている。
ロンドンと歴史とゴースト譚が好きな方には、この本は格好の案内書である。各章の最初に、簡単な地図が入っているが、ロンドンの地理に精通していない人は、Google Mapでロンドンを表示し、画像やストリートビューで雰囲気を確認しながら読むと、一層、楽しめる。
(記:17回生 井上 2015/01/25) |
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