小田求先生からの便り
長崎東高在京同窓会に、ご招待をいただき有難うございました。 初めて関門トンネルを通って、長崎東高校に着任した当時、梅田倫平校長先生の「梅にはうめ、桜にはさくら、各々いいところがある…」の著名な話をはじめ、教職員と生徒とお間に醸し出される信頼感・親密感と、教育へ取り組む姿勢を学び取り努力したものです。お陰様で、昭和40年に県推薦により東京教育大理学部へ内地留学、翌年に国際キリスト教大学で米国アジア財団基金によるBSCSセミナーに参加し東京で有意義な研究したことを思い出す。
かつて、あの西山の運動場で生徒達と竹を集めて桟敷作りや仮想行列に、また講堂で卓球試合があり、生徒が一生懸命頑張ってくれて優勝したあの姿など、一コマ一コマが懐かしく思い出される。
人生の中で33歳に胃手術、41歳に脳血栓症を経験し再起不能と密かに思っていた私だけに定年退職して一年間、元気で過ごした事を感謝している今日この頃です。では、在京同窓会の皆様のご活躍をお祈りし、6月にお会いするのを楽しみにしております。
生物研究5巻1号のBSCS紹介記事を見て、早速試用版テキストを丸善から取寄せたのは6年前であった。テキストに目を通し、その内容の斬新さに驚異の念をもち、会誌などを通じて「BSCSについて」、「欧米の理科教育現代化運動」等の報告を書き組織的研究の必要を呼びかけてきた。38年には教育大での青版の研究討議に自費で参加。さらに41年ICUでの米国アジア財団の資金で開催された第2回BSCSセミナーに選考され充実した日程をもつことができたのは貴重な体験であった。
『Patterns and Processes』の指導理念の教材化の卓越な点に着眼して「生物領域の基本概念と科学の方法特にBSCS特殊教材を中心にして」という小論文を発表した。
一方、BSCSによる実験法、探求への招待の導入、またBSCS青版の考えを重視した教育出版の教科書を用いるなどして、日本における生物教育のあるべき姿について模索をつづけてきた。つまるところは単なる模倣でなく、日本の教師が真剣にわが国にアダプトするものを創造していこうとする積極的姿勢が必要なことを痛感している。
さて、九州においてはICUでのBSCSセミナーに参加した福岡高校梅野先生、鹿児島教育センター吉井先生、長崎東高校小田、等が中心になってBSCSの研究を推進しているが、都生研のような強力な組織的研究は各県とも行なわれていない。大分県では一昨年上野丘高校幸先生のよびかけで、中島雄次郎BSCS委員を招いて講習会がもたれた。
地方でも、日本適用版の普及等により、BSCSの指導理念がじょじょに浸透してきているが、今後、生物教育についてのホットニュースを耳から直接聞くのでなく常にペーパーから得ざるをえないという地域的なギャップをのりこえて、現代化を定着させ理想とする科学教育に近づく方向に努力していきたいものと思っている。