明治以降、日本各地で教会が建てられていくが、特に長崎には明治から昭和初期にかけて建てられた教会が多く残っている。いわゆる過疎の地域の教会が多く、人口減少が進む中、文化財保護の観点から保存の真剣な検討をとの提言は、2000年ごろから「長崎の教会を世界遺産に」という県をあげての運動にひきつがれていった感がある。
鉄川與助が設計施工した教会は、明治期だけで12の工事実績がある。與助は、代々、大工の棟梁の家系に生まれ、寺院や公共建築物もてがけているが、特に教会建築で高い評価を受けており、数も多い。
本書は、與助のそれぞれの建築物について、多数の写真を用い、歴史、周りの環境、デザイン、建築材料、工事の進め方、費用と支払、エピソードなど詳細に記述、與助の仕事を丁寧に紹介している。また、與助の手帳には、衣食の暮らしの記録もあり、当時の生活の生き生きとした紹介文にもなっている。
以前は、與助の造った教会を訪れるには、交通も宿泊もままならず、大変な苦労があったようだが、最近は、訪れることができる教会も増えている。素朴で暖かい與助の造った教会が、五島をはじめとして、九州に数多く残っている。是非、訪れてみてください。
文責:17回生 井上早苗( 2017/07/17)