天主堂建築のパイオニア・鉄川與助

 19回生の喜田信代さんの新著をご紹介します。喜田さんは、鉄川與助が晩年を過ごした横浜在住の鉄川喜一郎氏のもとに残された資料を十数年かけて研究、整理し、2016年に学位(博士)を取得されました。 研究結果を一般書として上梓されたのが本書です。

天主堂建築のパイオニア・鉄川與助

◆著者 喜田信代(19回生)
◆出版社 日貿出版社
◆判型 A5版
◆頁数 375頁
◆ISBN 978-4-8170-8231-2
◆発行日 2017年2月25日
◆定価 本体2,800円+税
◆購入 一般書店、インターネット書店
◆著者略歴
1967年 長崎東高卒業
2004年 放送大学大学院修了
2010年 東京工業大学大学院人間環境システム博士後期課程満期退学
2016年 札幌市立大学大学院デザイン研究科デザイン専攻終了。博士(デザイン学)
◆著書
「日本れんが紀行」(日貿出版社、2000年)
青砂ケ浦天主堂
奈摩内(青砂ケ浦)天主堂/明治43年(1910)竣工
◆目次
口絵
はじめに
地図/鉄川與助の建築物所在地 
第1章 鉄川與助の生涯と業績
第2章 建築技術者・棟梁 鉄川與助の仕事――天主堂・学校・寺院
第3章 新しい建築材料と長崎の天主堂
第4章 宣教師が伝えた教会建築
第5章 天主堂の請負と工事費の清算
第6章 棟梁の暮らし――與助の「手帳」覚え書き
資料編  
 教会建築の基礎用語  
 協力者・協力機関・資料提供者  
 参考文献  
 既発表論文  
 おわりに
◆内容紹介(まえがきから抜粋)
「横浜市に住んでおられた喜一郎一家は、最晩年の鉄川與助夫妻と同居し、看取っておられる。…中略…
 資料は、鉄川與助が鉄川組を創業した明治39年(1906)からの『手帳』や「手紙」の類、工事に関する様々な書類であった。 『手帳』には、仕事の打合せ覚えや作業の予定のほか、職人たちの作業日誌やお金の受払などを記録している。 民間では、まだ工事の契約書を取り交わす習慣のなかった時代に、決算書や予算書、工事日誌、会計簿などを、 與助の考えで記録したと思われる。」

 明治以降、日本各地で教会が建てられていくが、特に長崎には明治から昭和初期にかけて建てられた教会が多く残っている。いわゆる過疎の地域の教会が多く、人口減少が進む中、文化財保護の観点から保存の真剣な検討をとの提言は、2000年ごろから「長崎の教会を世界遺産に」という県をあげての運動にひきつがれていった感がある。
 鉄川與助が設計施工した教会は、明治期だけで12の工事実績がある。與助は、代々、大工の棟梁の家系に生まれ、寺院や公共建築物もてがけているが、特に教会建築で高い評価を受けており、数も多い。
 本書は、與助のそれぞれの建築物について、多数の写真を用い、歴史、周りの環境、デザイン、建築材料、工事の進め方、費用と支払、エピソードなど詳細に記述、與助の仕事を丁寧に紹介している。また、與助の手帳には、衣食の暮らしの記録もあり、当時の生活の生き生きとした紹介文にもなっている。
 以前は、與助の造った教会を訪れるには、交通も宿泊もままならず、大変な苦労があったようだが、最近は、訪れることができる教会も増えている。素朴で暖かい與助の造った教会が、五島をはじめとして、九州に数多く残っている。是非、訪れてみてください。
文責:17回生 井上早苗( 2017/07/17)
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